今日は世界で最もシンプルなフレームワークの一つである2×2マトリクスの使い方について説明します。これまで自分の仕事でフレームワークを使って何かを説明しようとしてうまく行かなかった方や、複雑な事象をわかりやすく整理したいけどやり方がわからないという方に、うまく使えるようになるためのコツを説明したいと思います。初級編なので、殆ど知っている方も多いと思います。この内容がつまらないと思った方は、もう少し難しい応用編も次の機会に書きますので楽しみにしていてください。
フレームワークとはなにか
フレームワークとは複雑な事象を整理するための枠組みのことです。
聞いたことがある方も多いと思いますが、市場分析の3C(Customer、Competitor、Company)、マーケティング施策の4P(Price、Place、Product、Promotion)、5forces(「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」)などが有名です。
こういうビジネス書に記載されているものだけではなく、自分で決めた枠組みは何でもフレームワークになります。
売上構造を売上=単価×数量に分解するのもフレームワークです。
自分のキャリアプランを考える上で、will(やりたいこと)、can(できること)、must(やらないといけないこと)の3つで考えよう、というのもフレームワークです。
最近話題になりつつあるSDGs(持続可能な17の目標)や有名な著作である「7つの習慣」、
自分の強みを診断できる「Strength Finder」もフレームワークです。
文章を書くときに言われる起承転結や、和食のメニューによくある松竹梅もフレームワークです。
世の中はフレームワークで物事を整理したり説明していることが非常に多く、実は身近で目にしたりしているものですね。
最もシンプルなフレームワーク2×2マトリクス
いろいろなフレームワークがありますが、その中でも最もシンプルなフレームワークの一つに2×2マトリクスというものがあります。
下記の図のように田の字を書いて4つに分類をします。
4つの箱が横や縦一列に並ばず、田の字形になっているのは理由があります。
縦軸と横軸にテーマを決めてそれぞれに当てはまるものを選ぶからです。
シンプルなフレームワークなのですが、これを自分で自由自在に使えるようになると、以下のようなメリットがありいいことずくめです。
フレームワークをつかうメリット
- 枠組みを決めるので、整理/議論する対象がはっきりする
- 議論していることの全体バランスがわかりやすくなる
- たくさんの項目の関係性が可視化される
- 重要なものの抜け漏れに気づける
- 事象や問題点の偏りに気づける
こういうことをさらっとやってのけるとなんかできるビジネスパーソンに見えます。
2×2マトリクスの書き方
では、2×2マトリクスの書き方を見てみましょう。上記のことはいきなりできるようにはなりませんが、練習をすれば徐々にできるようになります。まずは書き方のフォーマットを理解してもらえればと思います。
テーマを決める
今自分が整理したいことをテーマにしましょう。なるべく具体的なものがいいです。
例えば食事とか読んだ本とか、好きな芸能人とか身近な例でいくつか書いてなれてみるのがいいです。
このとき具体的であればあるほど分類が楽なので、食事をテーマにするなら、ただ食事、とするのではなく自分の好きな食事、とか、明日の夜に恋人と食べたい食事、とか具体的にするといいです。ここではダイエットに向く食事、というテーマでやってみます。
軸のタイトルと基準を決める
軸に選ぶタイトルを2つ決めます。
ダイエットなのでやはりカロリーは外せないと思います。
それ以外は人によって気になることが違うので、外食か家の食事か?お金がどのくらいかかるか?和食か洋食か?とか色々思いつくと思います。
何個か組み合わせを考えて最もしっくり来るものをやってみるのがよいです。
お金でやってみます。
縦軸にカロリー、上段を高い、下段を低い。横軸に金額 右を高い、左を安いにしましょう。
当てはまるものを埋めていく
これで4つの枠が完成したので、これに当てはまるものを埋めましょう。
高くてハイカロリーな食べ物は、ステーキ、高くてローカロリーなのは、お取り寄せできる有機野菜、、、という感じで埋めていけば完成です。
ダイエットに向く食事というテーマなのに、ラーメンやジャンクフードが出てきました。
そもそもカロリーが高い時点でダイエットに向かないので、これは軸がまずかったという例ですね。
軸の選び方で失敗すると整理がうまく行かないのは、ビジネスの課題でも考え方は同じです。
こういう感じで失敗してもいいので、このように身近にある例でいくつかやってみると良いでしょう。
例えば、
休日の過ごし方(外出/家×お金、一人/複数×場所)
週末に読みたい本(ジャンル×長さ)
引越し先の候補(職場からの距離×家賃、治安のよさ×利便性)
()は2軸の例ですが、いろいろな例でやってみると感覚がつかめると思います。
よくある2×2マトリクスの例
ビジネスの世界でも2×2マトリクスはいろいろなところで使われており、その例を2つ紹介します。
重要度と緊急度
これはよく知っている人は多いと思います。
やることの優先順位を決めるときに使います。
以下のようなものです。
このフレームワークの大事なのは、4つの箱の優先順位を決めることです。
重要度と緊急度のフレームワーク
- 重要かつ緊急なこと
- 重要だが緊急でないこと
- 重要でないが緊急なこと
- 重要でないかつ緊急でもない
①の重要かつ緊急なこと最優先で取り組むこと、④の重要でないかつ緊急でもないことは極力やらないというのは、誰でもそうですが、②と③のどちらを優先させるのかは悩ましいです。
②重要だが緊急でないことは、将来のために自己投資の勉強、運動をして心身を健康に保つことなどです。締切がないがどこかでやっておかないと将来困る類のものです。
③重要ではないが緊急なことは、突然かかってくる電話、SNS/メールでの質問(相手が回答を急いでいる場合)、期日までに提出すべき書類、あまり意味のない会議などです。いずれも即対応が必要だったり、期日が決められているという意味で緊急ですが、本人にとってはやらないでいいならそれに越したことはないというものです。
結論から言うと③よりも②を優先させましょう!というのがこのマトリクスで自分のやることを分類したときに大事なポイントです。
③の緊急度高いものはどうするの?という問題がありますが、極力やらないor仕組みを作ってすぐに終わるようにする工夫をして時間を生み出し、②の重要なことに時間を使えるようにしましょう。
たとえば、電話なんかかけてくる相手は無視する、メールは速攻で返信し溜めない、毎回決まった書類を出すならフォーマット化して作業時間を減らす、意味のない会議はできる範囲で時間を短くする、開催頻度を減らすなどです。
これは、自分ひとりではできないことも多く周囲の協力も必要です。
周りを巻き込むにはなるべく重要なことで価値を出せるように頑張るしかないのですが、昨今のリモートワークの環境によってみんな無駄と思うことを削ろうとしているのでいい流れだと思っています。
SWOT分析
もう一つ紹介します。
SWOTというフレームワークで、企業を取り巻く環境を整理するためのものです。
軸は内部/外部環境×プラス要因/マイナスの2つです。
それぞれ内部のプラス要因は強み(Strength)、内部のマイナス要因は(Weakness)、外部環境のプラス要因は機会(Opportunity)外部環境のマイナス要員は脅威(Threat)です。
この4つの英語の頭文字を取り、SWOTといいます。
ビジネスにおいて戦略を立てるためには、内部環境と外部環境の両方を適切に把握することが必要です。
加えてそれぞれのプラス、マイナスの両面を見ないと正確な状況把握ができないので、この2軸で分析をして整理をすることが大事です。
このフレームワークもよく使われるのですが、大事なのは分類して枠の中を埋めて終わるのではなく、埋めたあとに、結局どうするのか?を議論して決めることです。
埋めればわかるのですが、結局このフレームワークを使って何をしたらいいのだろうか?ということですぐに行き詰まります。
ある程度情報が網羅されたところで、今後自社の事業に一番影響を及ぼしそうなことは、機会なのか脅威なのか?それに対して自社は強みがあるのか、弱みが露呈してリスクが高くなるのか?などを見極めていくことが必要です。
そのため、フレームワークでよく陥りがちな、当てはめて満足して終わる、ということがないよう、整理したものを活用して戦略立案に活かすことが重要です。
2×2マトリクスが使えるシーン
最後に、マトリクスをどう使えばいいのか、ということについて例をお伝えします。
複数の物事から優先順位を決めたい
たくさんある物事をマトリクスに整理すると、緊急度と重要度の例のように、どのタスクからやればいいのか、という優先順位を決めることができます。
ダイエット向きの食事であれば、安くローカロリーなものを食べたほうがいいので多くの食事から選ぶことができます(これは例です。わざわざマトリクスに整理しなくてもわかるのですが、、、)
全体像を把握したい
会社の戦略を立てる上で、自社のことだけを考えても決まりませんし、マイナス面だけを見ていても適切な戦略は立てられません。
しかし、考えたり分析をしているときは、どうしても視野が狭くなりがちで、真剣にやっていても大事な要素が抜け漏れることは仕事でもあると思います。
SWOTのような全体像を説明できるマトリクスを使うと、分析の抜け漏れに気づきやすくおすすめです。
という感じで、フレームワークの使い方の基礎を紹介しました。
ぜひ、自分でも例に習って毎日数個のフレームワークを作ってみてください。
例は身近なものであれば何でも良いです。
次回は、マトリクスをよりよく作るためにどうすればいいのか、書いてみると陥りがちな罠などを説明し、自分のツールとして使いこなす具体的な方法論を紹介したいと思います。