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【書評】事実はなぜ人の意見を変えられないか

皆さんこんにちは。IGAです。

本日は、事実はなぜ人の意見を変えられないか、という本を紹介します。

以前、スイッチ!「変われない」を変える方法という本を紹介しました。

「スイッチ!」は、人や組織を動かす工夫について書かれていました。

今回紹介する「事実はなぜとの意見を変えられないか」は、脳科学などの見地から人がどのような影響を受けるのか、について分析をしている本です。

スイッチ!が人を動かす上で実践的かつ具体的な方法を記載しているのに対して、事実はなぜ人の意見を変えられないかは、より理論的に人の行動の動機や、情報をどう受け取るのかなどを説明している本になります。

  

こんな方におすすめ

  • 事実や数字などから人を説得してみたがうまくいかない経験をしたことがある方
  • 人がどういうことに対して影響を受けやすいのか、について興味がある方
  • 行動経済学など人の行動の特性について興味がある方

 

サマリ

  • 人は、自分が信じている意見をサポートする事実しか受け入れない
  • 人は、無意識のうちに、周囲の環境や他人の意見に左右されやすい生き物
  • 特に、ポジティブで短期のメリットがある情報を受け入れやすく、短期的にデメリットのある情報は受け入れ難い
  • 人の説得をするときや、自分で重要な判断をするときは、脳の特性を理解することが重要

 

 

 

本書の構成

本書は、人が受ける影響について7つの観点から書いており、全部で9章で構成されています。

ぞれぞれの章は10-20ページくらいなので、細切れに読んでいくのも良いですし、全部で240ページくらいなのでお時間がある方は一気に読んで理解を深めるのも良いと思います。

 

人が受ける影響というのは、以下の7つです

人に影響を及ぼす7つの要素

  • 事前の信念
  • 感情
  • インセンティブ
  • 主体性
  • 好奇心
  • 心の状態
  • 他人

 

詳細は是非本書で楽しんでもらいたいですが、簡単にお伝えすると、以下のようなことが書かれています。

事前の信念:人は見たいものしか見ない

人は自分の信念をサポートするデータしか信じることができません。

反対意見を持つ人をどんなにデータで説得しようとしても不可能です。

とくに分析能力が高ければ高いほど、反対の意見をデータで説明してもデータそのものを受け入れることができないため、逆効果になります。

 

感情:人は他人の勘定から影響を受ける

人の感情はとても伝播しやすいということがいくつかの実験結果とともに示されています。

多くの人が同じ状況では同じ影響を受けます。

例えば、映画を被験者に見せて脳波を観察する実験が紹介されています。

時間が立つにつれて、ほとんどの人が同調しているような波形を示すシーンがありました。

これは同じシーンを見ると人は同じ感情を抱くということです。

人が外部環境から受ける感情の80%はほぼ共通で、個体差というのは20%くらいしかない。そのくらい同じ状況から受ける影響や反応は類似しています。

これは人種や言葉を超えて同じだそうです。

 

インセンティブ:短期の快楽に繋がる情報しか見えない

人は短期の快楽に対して動きやすいです。

反対に、長期的なメリットしかないことや短期であっても苦痛やネガティブなことは避ける傾向にあります。

たとえ健康に悪いとわかっていても酒を飲むのをやめられないとか、ですね。

また、情報に対しても同じような反応を示すので、危機感を煽るような情報をインプットしても行動には繋がりにくく、ポジティブなメッセージを発信する必要があります。

これは、事前の信念でも記載したことに近いと私は考えています。自分の考えに沿わない情報は、ネガティブな情報として捉えられてしまいます。だから受け入れがたいということですね。

 

主体性:自分で決めたことは実行する

人は自らが選択できるような状況を作り出してあれば、自分から動くことができます。

例えば、老人ホームに入居している老人に対して、観葉植物を与えた実験があります。

片方のグループは介護士が世話をし老人は鑑賞するだけのグループ。もう片方のグループは介護士は何もせず世話自体も老人がするグループに分けました。

その結果、後者のグループのほうが、植物の世話を自分でやるだけでなく、健康な状態を維持しやすく元気で活発になりました。

植物の世話をするという主体的な状態をつくることで他の行動にも伝播しました。

このように、自分から何かを選択しているという状態を作り出すと、人は自ら動くことができます。

 

好奇心:良い知らせほど早く知りたい

人は良い知らせであればあるほど早く知りたがる傾向があり、悪い知らせや失意をもたらす情報は回避したがります。

あまり健康に自身のない人は健康診断の結果を見ようとしなかったり、よくあるのはダイエットが上手く行っていないときに体重計に乗るのが怖い、とかいうやつです。

実験によると、よりポジティブで良い情報を目にすると脳が活性化されるのに対して、ネガティブで悪いと判断される情報を聞いても、脳はあまり反応しないようです。

同じことを伝えるにも、伝え方がよりポジティブになるようにしたり、悪い情報を伝えるときもその状況を改善するために必要な情報として伝えたほうが、聞き手に対して良い影響力を与えられます。

 

心の状態:人は、メンタルによって判断が揺らぐ

人は自分の心の状態や周囲の環境によって、同じインプットを受けても判断を変えることがあります。

たまたま天気が悪かったり、プライベートでなにか良くないことがあってそれが仕事の判断に影響することは普通の人でもありえます。

ありえるどころか無意識のうちに影響を受けまくっています。

そのため、上司に何か相談をしても否定されたとして、別の日に同じことを相談するところっと別人のように逆の回答をして承認が得られた、ということを経験したことがある方もいると思います。

何に影響を受けているのか、というのはわからないことが多いですが、一度拒否されても簡単に諦めないほうがいいということがわかります。

 

他人:どんな人でも他人の意見に左右される

一番人の判断に影響を受けているのは、他人の振る舞いです。

例えば、Amazonや食べログのレビューは、最初の数名が高評価をするとあとに続く人もそれに習って結果的に高い評価がつく、とかその逆のことが平気で起こります。

また、簡単なクイズに答えてもらう実験を行った結果も興味深いです。

他の人全員をサクラにし全員わざと間違えた回答をさせ、そのことを対象者にわかるようにすると、ほとんどの人がどんなに単純な問題でも間違った回答を選んでしまう、ということが起こるそうです。

一方、一人でも正しい答えをする人を紛れ込ませると、正解率が上がります。

そのくらい他人の意見に人は左右されてしまう、ということです。

 

なぜ人は事実では動かないのか

結論から言うと、人は事実を突きつけられたとしても行動を変えることは少ないです。

とくに特定の信念を持っていることに対して反対の事実を見せても受け入れることはありません。

それは、その人が偏屈だから、とか、頑固で否定的な事実を受け入れる度量がないから、とかではなく、多くの人が当たり前のように持っている性質です。

人は見たいものしか見えないのです。

 

そのため、事実で人を説得しようとしても、その事実に対して好意的、もしくはフラットな立場にいる人であれば効果はあるのですが、真逆の意見を持っている人に対してデータで説得をすることは不可能に近い、とこの本は教えてくれます。

とくに分析的な思考が得意な人ほどその傾向が高くなります。

じゃあ、どうすればいいのか、というと、反対意見を否定するような説得の材料を用意するのではなく、反対意見を持っていてもその裏にある共通のゴールを探し、それに対して訴えかけるのが良い、です。

例えば、ワクチンを受けると副作用を恐れている、人に対して、副作用はないというデータをいくら見せても逆効果です。

そうではなく、副作用の話は一旦置いといて、ワクチンによって得られる効果や、ワクチンを打たないリスクをひたすら説得して行くということです。

まあ、これはこれで効果があるのですが共通点を見つけることは容易ではないですし、副作用の話に引っ張られたら勝ち目がないので、そのときにどうするのか、という対策として人の影響に左右するものを多くあげています。

 

人はどういうときに影響受けるのか

 

どういう時に人の意見を受けやすいのか、ということが理解できるので、他人を説得するときだけでなく、自分が判断をするときにどういう状態になっているかを客観視する視点を与えてくれるという意味でもこの書籍はおすすめです。

 

人に影響を及ぼす7つの要素

  • 事前の信念
  • 感情
  • インセンティブ
  • 主体性
  • 好奇心
  • 心の状態
  • 他人

 

ポイントは、以下になります。

サマリ

  • 人は、五感から受ける情報や他人の感情など外部環境に影響を受けやすく、客観的事実など論理的に説明できることよりも直感的に分かる情報で判断をしやすい
  • 受け取る情報も無意識のうちに取捨選択をしており、より短期的、ポジティブな情報を捉えやすく、長期的、ネガティブな情報は受け入れようとしない傾向がある
  • ただし、過剰にネガティブな情報に対して過剰反応をしてしまう
  • 外部情報の中で他人の影響は大きいため、影響力を加味して情報を判断しないといけない


 

今後、行動科学はどう進化していくのか

最後の章では、最新の脳科学の研究についても記載しています。

つまるところ、人の反応は脳のどの部分が反応し、どのように信号をやり取りしているか、に行き着きます。

その考えを究極的に応用すると、人同士の脳を電極でつなぎ自分の意志で他人の体の動きや感情をコントロールすることができる、という実験まで行われています。

心理学として捉えていた人の心や感情の動きは、脳科学で解明されてくる部分がかなりを占めています。

そしてその脳科学も、究極的には脳の中の化学物質や電気信号がどう動いてどう反応するのか、どんなホルモンがどう分泌されるから、人の感情が変わるのか、ということまで説明されています。

メカニズムが解明され、そのメカニズム通りに人の脳に作用させることができると人の感情を自在に操ることまでできることまでできてしまいます。

このあたりの詳細が知りたい方は、ホモデウスという書籍がおすすめです。

ホモデウスは、サピエンス全史の続編として非常に面白い書籍なので、こちらもセットで読んでみることをおすすめします。

最後は、SFのような話になりましたが、SFの世界が実現できる世界が間近に迫っている中、人間として、自分や他人の感情にどう対峙していけばよいのか、ということを考えさせてくれる良い本だと思います。興味があればぜひご一読を!

  

 

 

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